2004年に年金制度に大きな改革がありました。それまでは年金の給付額が先に決まっていて、それに合わせて現役世代の負担額を決めるものでしたので、高齢者が増え、一人当たりの年金支払いが増えていくと、給付額が際限なく増大し、現役世代の負担が膨れ上がるのが目に見えていました。そこで、逆に現役世代の負担額をあらかじめ決め、それをベースに年金給付額を決めることになりました。改革された主な点は以下の通り
1、基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げる
2、財政が当初の予定通りになっているか、5年ごとに検証
3、「保険料水準固定」方式の導入
4、「マクロ経済スライド」の導入
1はそのままの意味ですが、要は年金支払いに税金を使いますよということです。逆に言えば、国民年金の保険料を払っていない人はただただ税金を取られるだけで損をすることになる、とも言えます。
2は「財政検証」と呼ばれていますが、公的年金制度が長期的に持続可能かどうかを5年ごとに検証する仕組みで、前回は2019年に実施されています。2024年である今年は5年ぶりに検証結果が公表される予定でありますが、前回の検証では出生率が80万人を割るのが2028年という見込みが、2022年に早くも割ってしまったことから、少子高齢化がさらに加速していることで大きく見直される可能性があります。つい先日、2023年の出生数が発表されました。前年よりも約4万1000人減って、75万8631人だそうです。日本は大丈夫なのでしょうか・・・。
3の「保険料水準固定方式」では、厚生年金の保険料率を毎年0.354%引き上げ、2017年度以降は18.3%とし、国民年金保険料は毎年280円引き上げ、2017年度以降は16,900円(令和5年度16,520円)までで打ち止めと決まりました。
自分のことを思い出すと、学生時代に免除申請手続きに毎年市役所に行っていましたが、あの頃は月額保険料が13,300円でした。就職後に6年分の請求書が来ましたが、働き始めの安月給では払う余裕がなく、また、当時は年金の重要性もよく理解していなかったため、結局10年の支払い可能期間を過ぎてしまいました。そういう人は結構いるのではないかと推測します。ただし、国民年金の加入期間である20歳から60歳の480ヶ月に満たない人は、60歳から64歳までの間に「任意加入」をして保険料を追加で納付することも可能なので、対象者は考えてみてはいかがでしょうか。私もその時は支払いたいと思っております。
4の「マクロ経済スライド」は、現役世代の保険料負担率が大きくなり過ぎないように、物価や賃金の上昇率より低く調整することにより、年金給付水準を徐々に抑制する仕組みです。ただし、『賃金・物価の上昇率が小さい場合』で、マクロ経済スライドを適用すると前年度よりマイナスになってしまう時は改定は行われません。また、『賃金・物価が下落した場合』も調整は行われないので、下落分のみ引き下げられます。簡単に言えば、賃金・物価の上昇ほど年金はもらえないし、下落すればその分下がるので、高齢者にはやや厳しく現役世代に考慮した政策と言えそうです。
先日、2024年度の公的年金支給額が、今年度より2.7%引き上げられることが発表されました。2年連続で「マクロ経済スライド」が発動されたことになります。今回の物価変動率は3.2%で、賃金変動の3.1%を上回りました。賃金より物価が上がった場合は賃金に合わせて改定するルールを適用し、0.4%が調整分としてマイナスされたことになります。
以前はこういったニュースは全然耳に入って来なかったのですが、勉強し出すと自然と入ってくるものですね。自分たちの将来のことなので、常に関心を持っていきましょう。