皆さんは年金に不安を持っていませんか?特に若い人からは、「自分たちが老後になったらもらえないんじゃない?」という声をよく聞きます。結論からいうと、「もらえます。ただし、もらえる額は少なくなる可能性は高い」です。職場の同僚にも聞かれたりしますが、「もらえなくなる時は日本という国が崩壊する時だよ」とよく言っています。しかし、間違いではないにしても根拠が明白ではなく、上手く説明できていなかったというのが正直なところでした。
そんな時、大江英樹氏の「知らないと損する年金の真実」という本を読み、改めて年金の存在意義を考えさせられました。余談ですが、大江氏は定年後の話や資産運用等の本を多数出版されていますが、どれも読みやすく勉強になります。本人自身も定年退職後に起業した方で、定年後の生き方を考える上でロールモデルになる方だと思っています。
さて、我々が年金を不安に思う原因の1つとして
「年金について正しく理解していないから」
と言えそうです。これは、きちんと説明しない政府や役人も悪いと思いますが、自分で勉強しようとしない我々自身の責任でもあります。なんと言っても、日本人の金融リテラシーは世界的に見て非常に低いですから・・・。
とは言っても、年金のシステムをきちんと勉強しようにも、複雑すぎて理解するも大変です。「付加年金」とか「加給年金」とか言われても、「何それ?」という方が大半でしょう。その辺の細かい話は置いといて、まずは年金の基本的な考えを見ていきましょう。
「年金は”貯蓄”ではなく、あくまで”保険”である」
これが根本の考え方です。有事の際、私たちは貯金か保険でまかなおうとしますが、基本的に自分でまかなえる額は”貯蓄”で十分であり、自分一人ではまかなえきれない額(例えば人身事故における対人保険等)は”保険”に入るべきです。何歳まで生きるか誰にも分からないため、いくら貯めれば安心なのかはっきりと言えない状況下で、年金は終身でもらうことができるのですから、「長生き」リスクのための最強の”保険”なのです。
去年の秋、私はCFP試験の「ライフプランニング・リタイアメントプランニング」を受けましたが、公的年金は試験のかなりの部分を占め、計算問題を含めてかなり苦労しました。そこで思ったのは、「そもそも年金って、いつからどういう経緯で誕生したんだろう?」という疑問です。
歴史から紐解いていくと、現在の国民皆保険が始まったのは1961年ですが、それまでの老後はどのように暮らしていたと思いますか?
国民年金がない時代、基本的に長男が遺産を全部相続する代わりに親の面倒を見ていました。やがて、高度成長期になり子供たちはどんどん都会に出て、「家族だけで老後を支える」という構造はほぼ無理筋となっていきます。
65歳以上の人口が、全人口に対して7%を超える「高齢化社会」に、日本は1970年に世界に先駆けて突入しました。国民皆保険が始まってから約10年後ですね。余談ですが、14%を超えると「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」を呼ばれます。日本は2023年の段階で高齢化率は29.1%で「超高齢社会」を迎えています。
この「高齢化社会」への突入から国民年金は老後の主役へと躍り出ましたが、次回は皆さんがよく誤解しがちなところを具体的に見ていきましょう。