「未納者が4割もいるから年金は破綻する?」
かつて年金保険料の未納問題が大きく取り上げられました。けれど、ちょっと考えるとおかしいことがわかります。だって日本の労働者の9割はサラリーマンなのですから。ご存知の通り、サラリーマンは給料から強制的に社会保険料が天引きされるので、未納は起こり得ないことです。確かにパートや会社の規模などで厚生年金に加入出来ない人は1,000万人近くいますが、この人たちは自分で国民年金の保険料を払っていたり、第3号被保険者だったりするわけですから、このような間違った情報を大々的に広める野党やマスコミには悪意があるとしか思えません。
ここでいう4割の出所は国民年金の未納者ですが、この中には学生で納付猶予を受けている人や、たまたまその月に払い忘れたなども含まれています。その中には後でまとめて支払っている人たちもそれなりの数がいるのです。公的年金加入者の約6,760万人のうち、払える余裕があるにもかかわらず払っていない人はせいぜい百数十万人という試算があり、割合にするとせいぜい数%にとどまります。
結局のところ、国民年金の半分は国庫負担、言い換えれば間接的に払っている税金から支払われているので、保険料を払わない人は損をするだけとも言えます。
「若い人は払い損?」
こういう意見もよく聞きます。1945年生まれの人は、厚生年金保険料負担額よりも給付額の方が5.2倍、国民年金では3.8倍。1995年生まれの人は、それぞれ2.3倍と1.5倍。これだけ見ると確かに負担率は上がっています。けれど、「賦課方式」である限り、制度が始まった当初に保険料を払わずにもらって得をする人たちと、何百年先か分からないけど年金制度が破綻した時に損をしてしまう人たちが出てきてしまうのはある意味致し方ないのかもしれません。
国民年金が始まった1960年(保険料支払いは1961年)、その時点で高齢だった人には「老齢福祉年金」が支払われましたが、「アメ玉年金」と揶揄されるほどの水準だったといいます。他にも、当時50代以上の人では保険料支払い年数によって「十年年金」と「五年年金」、年金受給権利である25年加入に満たない35歳以上の人では、保険料を割増で払ってもらうことで年金をもらえるようにしました。これらを「経過措置」といいます。
兎にも角にも、一旦軌道に乗ったら、あとは世代間格差をどうこう言ったところでしょうがないでしょう。国民は”長生きリスク”への安心材料とみなし淡々と保険料を払い続け、マスコミや政治家はけっして不安を煽らず、役人は年金制度が破綻しないように修正しながら維持するしか道はありません。
「年金を無駄遣いしているから破綻する?」
かつて「グリーンピア問題」がありました。これは、1980年〜88年に全国13カ所に建設された保養施設です。建設費および維持費等で約3,000〜4,000億の損失をだしたと言われていますが、当時は国会議員が誘致に積極的に動いて、地元は大いに喜んだことでしょう。
施設の運営は地方自治体や年金保養協会が行っていましたが、なにせノウハウがないため赤字経営だったところが多くありました。その赤字を年金福祉事業団が負担したのです。その原資が国民から徴収した保険料でした。積立金がこのように使われることは当然許されるべきものではありませんが、積立金の総額からしたら微々たるものであり、これで破綻するということはあり得ないことはちょっと考えれば分かることです。責めるべきは積立金活用に関してのガバナンス問題であって、破綻うんぬんは別問題と考えるべきものでした。先程も触れましたが、マスコミや野党の批判自体は構わないのですが、方向性が違うことが多々あります。悪意がなく単なる無知だとしたら、それはそれで罪でしょう。