幸せはお金で買えるのか問題②

幸福学

さて、後半のポイント挙げてみていきましょう。

・既婚女性→既婚男性→独身女性→独身男性の順で幸福度が下がる

・子供のいる女性ほど幸福度が低い

・離婚したら不幸せになる!?

・「家族ガチャ」で人生は変わる

独身高齢者男性の幸福度が最も下がる要因は、人との交流が少なく、孤立化するからと言われています。私もそうですが、仕事以外で友達付き合いする男性は多くはないのではと推測します。退職したらなおさら社会との繋がりがなくなり、かといって新たに外に出て行くのもなかなか難しいですよね(その点、女性は社交的なのですぐに友人を作ってしまいますが)。退職する数年前から徐々に趣味や交流の場を意識して作っておくのがベターなのかもしれませんが、一人が好きな人もいるでしょうし無理しない程度がいいでしょう。ちなみに、イギリスでは「孤独担当大臣」をわざわざ作ったぐらいですから、孤独の弊害は相当なものと認識なのでしょう(1日15本の喫煙に相当するともいいますが・・)。

OECD諸国のほとんどの国では女性の大学卒業率が男性よりも高いといいますが、妻の方が夫よりも学歴が高い夫婦」は女性の幸福度が低いというデータがあります。これは、世帯年収は低くなり、一方で女性の家事労働時間は変わらないからと思われます。また、男女とも相手が若い方が夫婦関係満足度が高いという外国の研究もあります。日本においても、同年齢婚よりも妻が年上の割合が逆転しており、相手に経済力を求めなくなったという時代の流れなのかもしれません。「夫婦関係は経年劣化する」のはデータで示されていますが、男性陣は特に注意すべきと思われます。というのは、離婚の原因となるのは、『結婚生活に不満が溜まった妻の幸福度が、夫よりも相対的に低くなりすぎること』が大半だからです。

では、「離婚したら不幸せになるのか」ということですが、イギリスの研究では、女性は生活満足度が離婚後緩やかに回復し2年後以降は離婚前より高くなり、男性では明確な回復が見られたのは5年後以降と示されました。日本でも熟年離婚は1980の1.1万件から2019年の4万件まで増えていますが、先程述べたように、妻の幸福度が下がることにより妻から離婚を言い渡されるワケですから、逆に「妻が夫を尻に敷いている家庭」は妻が主導権を握っているため、妻は心地よく過ごすことができ、離婚のインセンティブが働かないと言えます。何とも皮肉なものですね・・。ただ、何かの雑誌で読みましたが、最近の熟年離婚では男性側から切り出すパターンも増えてきているらしいです。晩年になってまで妻にあれこれ言われるよりも、一人悠々自適に暮らすのが良いという判断見たいです。

子供のいる女性、とりわけ子供の数が増えるほど、生活満足度が段階的に低下していき、子供が思春期に差し掛かると最も低くなるそうです。原因としては大きく①お金②夫婦関係③家事育児負担と言われています。日本では第1子出産後に夫の子育て支援が得られず夫婦関係が悪化し、女性の幸福度が低下&第2子出産への抑制がかかります。ついでにヨーロッパの研究では、最大の要因はお金だそうです。また、「子供のいる高齢者」も生活満足度が低いそうで、経済環境の悪化からパラサイト・シングルが増加し、親世代の金銭的負担が増していると言えそうです。実際、私の地元の小中学校時代の友人にも未だに未婚で親と暮らしている人が何人もいます。良い悪いではないですが日本の縮図が垣間見れ、日本の将来にちょっと不安を感じます。

2000年から2018年で様々な少子化対策がなされているはずですが、「子持ち女性の幸福度」に改善は見られず、「子供のいない既婚女性」との差は緩やかに拡大しています。その流れからなのか、妻45歳から49歳で子供のいない割合は2002年の4.2%から2015年の9.9%まで上昇しています。「結婚したら子供を持つべき」という価値観も変わってきているのでしょう。

親ガチャ」という言葉が一時流行りましたが、「家族ガチャ」で人生は変わるのかという研究もあります。弟のいる長女vs妹のいる長女」の研究では、弟がいる長女の方が理系を専攻する割合及び年収は低いと言われ、これをブラザーペナルティと呼んでいます。ブラザーペナルティが生じる原因の1つは、①親の行動パターンの変化と、②身近に異性がいることによる子供の行動パターンの変化に分けられます。

①では、同姓同士の親の方が一緒の時間を共有しやすい(父親は男の子、母親は女の子)ので、自然に伝統的な性別役割分業意識を持つようになることから、男=仕事、女=家事育児という思考が育ちます。②では、人は何かしらを差別化することにより個性を獲得するようになりますが、異性がいる場合、自分の性別に沿った行動や態度を取ることが手っ取り早く、それが①の結果とリンクしていきます。親からすると、子の数はある程度コントロールできても、性別までは無理なので難しいところではありますが・・・。余談ですが、「長男プレミアム」という言葉も紹介しておきます。これは、長男ほど次男以降よりも学歴及び年収が高いというものです。また、兄弟の数が多いほど子の学齢は低下します。一人一人に掛けられる教育費は低下していくので、感覚としては分かりますね。

まとめると、幸福度を大きく低下させる要因は、

①健康状態の悪化

②経済的なもの(お金)

③孤独・孤立

と言えそうです。当たり前と言えばそれまでですけど、改めてデータで客観的に示されると、納得感が増します。また、日本では専業主婦の方が幸福度が高いですが、社会進出が進んでいる国ほど働く既婚女性の方が幸福度が高いことから、今幸せと思われることでも時代の変化によって変わることもあり得ます。時代の変化に対応しながら、家族で相談し合い、みんなが折り合える形を決められたらいいですね。