教育を考える①

教育

2015年に書かれた本ですが、『「学力」の経済学(中室牧子著)という本を改めて読み返してみました。著者は教育経済学を専門にされている方で、客観的データを用いてエビデンスに沿った解説をしてくれていますので、10年近く前の本ですが今でも有用だと思います。ここで、「相関関係」と「因果関係」の違いを説明しておくと、「相関関係」は2つの出来事のうちどちらが「原因」で、どちらが「結果」であるか明らかではなく、必ずしも「因果関係」を意味しない、ということを確認しておきます。

ご褒美で釣っても「良い」

人間は近い将来を優先するので、「勉強は明日でいいや」と思いがちです。特に子供はそうでしょう。そこで、目の前ににんじんをぶら下げることにより、勉強を先送りにさせないという戦略を取ります。ここでどのように褒美を与えるかですが、「テストで良い点を取ればご褒美をあげます(アウトプット)」と「勉強をしたらご褒美をあげます(インプット)」のどちらが学力を上げるかというと、インプットの方が学力が上がるそうです。つまり、結果よりも行為を褒めてあげた方が良いということです。また、ご褒美は何がいいのかですが、子供が小さいうちは「お金」よりは「トロフィー」のようなお金以外が好ましいそうですが、「お金」を必ずしも否定するわけではなく、金融教育も同時に行えばお金の価値や貯蓄の大切さも学べるとのこと。現代は特に金融リテラシーが重要な時代になってきましたので、高学年ぐらいになったら「お金」もありかなと思います。

自尊心(自分に自信がある)が高い子は、概ね教員との関係が良好で、学習意欲が高く、実力に見合った進路を選択している傾向がありますが、日本人は他国と比べて圧倒的に自尊心が低いと言われています。では、「自尊心が高まると学力が高まる」かというと、それは社会実験で覆されました。つまり、「学力」が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらした、ということです。学生の自尊心を高めるような介入(あなたはやればできる等)は、学生たちの成績を良くすることは決してなく、かえって自分に対して根拠なき自信を持たせ、ナルシストを育てかねないとのこと。怖いですね💦。自分の子も含め、今頃の子は褒められて育てられていますので、果たして本当なのかと疑ってしまいます。ただ、振り返ってみますと、会社に入ってきた新人は、『「できない」くせに焦りがなく妙にゆったりしていて、ガツガツしてない』と感じるのは自分だけでしょうか。本人の個性もあるかもしれませんが、少なくとも自己肯定感は低くはなさそうです。ついつい世代で判断してしまいがちですが、「見て学べ」的に育った身としては理解に苦しみます・・・。

ほめ育てはしては「いけない」

上記の理由からむやみやたらに褒めるべきではなく、メリハリをつけて褒めるというのが私の解釈ですが、褒めるのであれば、「能力(頭がいいのね)」を褒めると意欲を失い、成績が低下するというエビデンスもあるので、「今日は1時間勉強できたね」といった行動を褒める方が良いみたいです。

ゲームをしても暴力的には「ならない」

香川県で「ネット・ゲーム依存症対策条例」なるものが、2020年に日本初のゲーム依存症対策に特化した条例として成立しました。同条例は18歳未満を対象として、ゲームの利用時間を1日60分休日は90分までとし、スマートフォンは中学生以下が21時まで、それ以外は22時までとする目安を設け、家庭内でのルール作りを促しています。条例に違反しても罰則規定はないですが、賛否両論あり、専門家の意見も分かれているようです。

依存症に関しては分かりませんが、少なくとも暴力的なゲームをしても負の影響はないそうです。逆に、幼少期にテレビを観ていた子供達の学力は高いとも言います。また、テレビやゲームをやめさせても学習時間はほとんど増えませんが、かと言って無制限に観させるのも良くなく、1日2時間を超えると子供の発達や学習時間への負の影響が大きくなります