学習時間を増やすのに「勉強しなさい」は逆効果で、「勉強を見てあげる」あるいは「勉強時間を決めて守らせている」という、親が自身の時間を犠牲にして手間暇かけると効果は高いそうです。うちの子も「宿題は終わったの?」と聞くと嫌そうな返事をしますが、「一緒にしようか」と言った方が割とやる気を出すのは、そういうことなのでしょうか。
私が子供の頃は荒れている中学校とかの情報をよく聞いていましたが、今はあまり聞かなくなりました。では、友達の与える影響はどの程度なのでしょうか。そういった実験も存在します。
①学力の高い友達の中にいると、自分の学力にもプラスの影響があるが、学力の高い優秀な友人から影響を受けるのは、もともと学力の高かった子供のみである
クラスに学力の高い優秀な友人がやってきた場合、もともと学力が低かった子供には、負の影響があるという研究もあります。学力の低い生徒の自信を喪失させ、大学への進学意欲を失わせたことが明らかになっています。学力の高い友人と一緒にいさえすれば、自分の子供にも正の影響があると単純に考えるのは間違いのようです。
②問題児の存在は学級全体の学力に負の因果関係を与える。1人の問題児によって、他の児童が新たな問題を起こす確率は17%も高くなる
大学寮のルームメイトの実験では、「成績」に関しては因果関係はないですが、「行動(飲酒、喫煙、ドラッグ等)」に対して与える負の因果関係が大きいようです。これはある意味運なので、怖いですね💦
③習熟度別学級により特に大きな学力向上が見られたのは、もともと学力が低い子供たちである
④引っ越しという強制的な環境の変化が負のピア・エフェクト(友人や周囲の影響を受けること)を小さくし、子供を守ることがある
自分も転勤族でしたのでよく分かりますが、転校すると自分のことを知っている人がいないので、新たな自分でスタートが切れます。仮に自分の子供がいじめに遭っていると分かったのなら、転校が一番の解決策なのではないでしょうか。
就学前の幼児教育プログラムの有名なアメリカの実験(ペリー幼稚園プログラム)があります。幼児教育に参加した子は、小学校入学時点のIQが高かっただけでなく、その後の人生において、学歴が高く、雇用や経済的な環境が安定しており、反社会的な行為に及ぶ確率が低かったのです。ただし、IQに関して言えば、小学校入学とともに差が小さくなり、8歳前後で差がなくなりました。
IQや学力テストは「認知能力」と呼びますが、ここで得られる教訓は、忍耐力・社会性がある・意欲的である・思いやりといった「非認知能力」が改善されたということです。どんなに勉強ができても、自己管理ができず、やる気がなく、真面目さに欠け、コミュニケーション能力が低い人は社会では活躍できません。一歩学校を出たら、学力以外の能力が圧倒的に重要というのは、誰もが実感できていることでしょう。「非認知能力」は人から学び、獲得できるものであることから、学校というのは勉強だけでなく、先生や同級生から多くを学ぶ場でもあると言えます。
親が幼少期のしつけ(嘘をついてはいけない、他人に親切にする、ルールを守る、勉強をする等)をきちんと行い、基本的なモラルを身につけさせることは、勤勉性という非認知能力を培う重要なプロセスで、大人になって年収が86万円高かったデータもあります。年収が高ければいいという問題でもないですが、人生の幸福度の1つの指標ではあると思います。
著者は行き過ぎた平等主義にも警鐘を鳴らしています。能力が一律平等であるなら、成功しないのは本人が努力をせず怠けていることと同義であることから、不利な環境に置かれている他人を思いやれなくなり、親切にし合おうという気持ちを欠く大人になる可能性があるとのこと。実際のところ、運動も学力も遺伝的要素は大きいと誰もが感じていても、教育現場では「やればできる」と言わざるを得ない雰囲気があります。実はそれこそ、本人自身を苦しめることにもなりかねないし、本来は違う道が合っていたにもかかわらず、無駄に学歴にこだわってしまった人たちも多いことでしょう。中国や韓国ほど学歴社会ではないにしても、もう少し自由な生き方を選べる世の中になってほしいなと個人的には思います。